以下は、すでに解体済み旅館で、2012年訪問レポートになります。
ラブではないけれど、レトロ好きは興味あるとこかと思います。
君たちはかつて横浜中華街に存在した、異様な建物を記憶しているだろうか?

その名は
“旅館オリエンタル”。

華やかな極彩の中華色と賑やかな人通りの中で、異空間が一軒。
屋上には、古いビルお決まりの
''別荘"も備わっている。
(よく台風で飛ばされないよね?)
一切人を寄せ付けない、視界に入っても無視してくれと言っているような気がする。

旅館×オリエンタルという名前自体違和感を覚えますが、この外観の上に、中には灯りが点いておらず、営業しているのか謎。
どんな人がやってるのかも謎。
なので、通りすがりの人たちも、見上げては
「ここ、営業してるの?」
と呟く人間を何度も目撃した。
友人が複数人で興味本位で建物をウォッチしていたら、中から女将?とみられるおばちゃんが
「ウチは見世物小屋じゃないんだよ!!帰った帰った!!」と罵声浴びせられたらしい。

こうなったらもう行くしかない。
この日、なんと誕生日の彼氏に
「横浜で誕生日会して、ホテル泊まろう」
と唆した(←極悪女
予約の仕方も分からないのでアポ無し突入!
話に聞く限りでは、穏やかな宿でないことは間違いない。
安全面はさておき、まだ廃墟の方が対面がいらない分緊張しない。
重い扉を開けると、そこに待っていたのは薄暗いフロントという名の物置き場。 新聞やらメモ用紙などがフロントに散乱している。

彼 ・すみませ~ん!
宿 ・シーン
彼 ・すみません!泊まりたいんですけど!
宿・シーン。
彼・あの~!
いくら大声で叫んでも何の反応もありません。
叫び続けて約5分後、やっと40歳台の男性スタッフと思われる人が出てきた。
彼・あの~泊まりたいんですけど!
男・え?え~?ウチに?いつ?
彼・あの、今日です。
男・え?今日?
明らかに我々を泊めたくないオーラが薄暗いフロントに広がります。
彼・中華街で泊まりたいので。
男・うち、クーラー、テレビありませんよ!
私・(やっぱりw)
彼・ま、ま、まぁ大丈夫です。
男・分かりましたよ。ちょっと待って下さいね。
すると男性は階段で2階に上がり、女性と大声で話し始めました。この内容が衝撃!
男・お母さんどうする?今日泊まりたいんだって!
女・
断っときッッ! 男・え~でもモッタイナイよ!
女・どんな?
男・
若いアベック!クーラーテレビ無しでいいんだって!モッタイないよ!
すると数分後、この女性と思われる初老の女性が登場してきました。
女・クーラー、テレビ無いよ!それでもいい?!
我々・は、は、はい、大丈夫です!
(正直勢いに圧倒)
※ここで宿泊費6000円を支払う
女・
写真撮らないでね!インターネットで悪口ばかり書かれて困ってんの!そう言いながら女性は我々を部屋に案内してくれた。

部屋は8畳くらいあって、中国の田舎で泊まる民泊みたいな感じ。

そして室内にはベッド、クローゼットのほか、扇風機、映らないテレビ、そして動かなさそうなCDラジカセなどが完備。


お風呂はユニットバス形式ですが、全てブルーで統一。

入室後、数分して缶の烏龍茶と温かいお茶をウェルカムドリンクとしてサービスしてくれた。

我々が昔から泊まってみたかったこと、そして彼の誕生日であることなどを伝えると、最初強張っていたお母さんの顔が徐々にやわらぎ始め、何と香港産のアンズを誕生日プレゼントとして我々にくれました。
何て優しいんだろう・・。
ちなみにこの『旅館オリエンタル』、華僑2世の創業者が始めた宿泊施設で間もなく開業60年。昔は横浜に停泊する船乗り員の専用施設でしたが、徐々に宿泊客が減り、今は横浜中華街に来る常連客などしか泊めさせないとのこと。
昭和レトロと中国民泊の雰囲気が一度に味わえるホテルなんてなかなか無い。
中華街は観光向けでもここは、真の"中華"である!



愛染の入浴!!
一見にも関わらず泊めさせてくれたお母さんに感謝しながら、眠るのであった。
…と言いたいところだが!!!
ベッドが硬い&痒くて眠れねぇす。。。
あまり寝付けないまま朝を迎える。
悪いと思っていながら、屋上の"別荘"が気になって行ってみてしまう。








あれだけ、愛染の心を突き動かしたあの建物も、今では壊され、その土地には新しく中華料理屋ができた。

その横の駐車場は、ビジネスホテルが建った。

土地はかなり高かったと思う。
誰からも必要とされなくなった建物は、どんな歴史を重ねていようと話がまとまるとすぐ消える。
あの親子は、今どこで何をしているんだろう。
おばちゃんごめんなさい、写真撮ってました。
でもインターネットには今日まであげてないよ!
もう、供養だと思って許してくれるよネっ!!
2012年7月訪問
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